人生の秋

　台風一過、雲ひとつない秋晴れの今日、チビ助の学校では運動会が開かれた。「うつマニア」としても親バカは拭いきれず、早朝からひとり場所取りに出撃である。チビ助の最初の出番は１０時からなので、カーチャンはユルリとお弁当を作りつつ、後々と参戦するようだが、校庭の片隅、この好天の木陰で安物のパイプチェアに尻を沈め、ひとり過ごすのも悪くない。日頃の疲れを癒しつつ、今日はビデオオヤジとして子供の姿を追っかける事とするか。

　今、チビ助は小学生であるが、まさに人生の夏を謳歌している時期だと考えている。知恵や体力が付き、自分の思いを爆発させている。生まれた頃がいわゆる春であり、何もかもが新鮮でピュアな時であろう。ならば人生の秋はと言うと、あくまでも個人見解であるが、二十歳過ぎてすぐの頃から今に至る時期と考える。ひとつは体力がピークを過ぎ衰えの一途をたどり、そのため知力を十分に発揮できなくなりつつあること。もうひとつは周囲の様々な出来事に対し、山越え谷越え、日々苦労を繰返すことが主な理由である。

　そしてその後の冬となると、端的に言えば隠居であろうか。「うつマニア」としてはまだその時期に到達していないし、それが許される環境にも無いが、それはきっと素晴らしきものと想定し楽しみで仕方が無い。自分の好きなことを好きな時に好きなようにやること、まさに人生の夏だった頃を再び謳歌させる絶好のチャンスと考えている。

　それを現実のものとするための心得とは何であろうか。第一に健康維持、第二に社会貢献というところか。ただしそんな大袈裟な事ではなく、毎日をニコニコして過ごし、他人には迷惑を掛けない、といった行動に徹する事だ。そのために現在は日々精進精進といったところだと思う。

　運動会の昼休み、校庭に広がり家族そろって昼食を頂く風景は、今も昔も変わりない。今は亡きオヤジ殿も自分が小学生の時にその風景を8mm映画で撮らえていたし、今日は自分がその風景を撮らえるためにビデオカメラを回している。白い体操服に紅白帽子、モニターに映るチビ助の姿は8mmに残るあの頃の自分に姿と酷似しており、嬉しく思う。

　運動会も無事終わり、今日一日のチビ助の活躍ビデオを家族で見ることに…。アレ？撮影プレイとポースのボタン操作を間違えているようで、時折地面が映っているゾ、ヤバイ。案の定、トップでゴールテープを切ったチビ助の姿は…撮ったハズなのに…虚しく無し。当然とチビの怒りと悔しさ残念心は頂点に達し、タイヘンな事態に陥ってしまった。

　その後、チビの怒りその他は間もなく納まったし、カーチャンも「気にする事無いよ」と慰められはするものの、我がビョーキの影響か、この程度の出来事でもドシンとココロに歪が発生、脳神経活動のエネルギーがゼロに近付いてしまった。やれやれ、ここ２～３日は低調な気分に悩み苦しみそうだ。ため息が続く…。

　やっぱ人生の秋は山あり谷あり、オチオチと隠居の楽しみなど妄想している余裕はなさそうだ。ただストレスの解消だけは着実にコナさなければならない。この際の戦略を考えて、暫く何か気晴らしをシテ診るかとも思う。だけど…、自分が一番好きな季節は、実は秋なのである。